【線形代数学入門】行列の演算(区分け)
1. 記事の目的
以下の記事で行列の演算(積)について述べた。本記事では大きい型の行列をそれより小さい型の行列の演算(特に積)へと帰着させるテクニックである、行列の区分けについて解説する。
2. 区分けの例
次の行列を考える。
の中の行列を、図1のように区画に分ける。 区分けした各ブロックの行列を次のように記号で置く。
区分けを行ったを次のように表すこととする。
3. 行列の区分け
一般の型の行列に関して述べる。を個の横線と個の縦線によって、個の区画に分ける。上から番目、左から番目の区画の行列をとするとき、は次のように表される。
3. 区分けされた行列の積
区分けされた二つの行列の積が、区分けされた行列の成分を一つの数とみなして、あたかも普通の行列の積として計算できることを以下で見る。
まず、自然数の分割について説明する。例えば3という数は他の自然数の和として
などと表すことができる。をこのように表したとき、右辺お、などのくみのことをの分割という。一般に、自然数に対して
型行列に対し、との分割
をとり、区分けされた行列の区画が型行列であるとする。型行列に関しても同様にして、との分割
をとり、区分けされた行列の区画が型行列であるとする。
注意 : の分割の仕方は、とで同じものでなくてはならない(積が定義できなくなるため)。即ち(2)と(3)は各も等しくなければならない。
積 (の結果となりうる型行列)を個の区画に分ける(区画分けしたときの結果が通常の行列の積と同様に個の区画になると予想している)。
ここで、は型であるとする。このとき通常の行列の積のように次が成り立つ。
(5)の証明:
(5)の両辺が同じ型であることを示す。
は
型、
は
型であるから、積は定義され、さらにによらず、全て型である。従って和
も型行列で、左辺と同じ型である。
(5)の対応する成分が等しいことを示す。成分が等しいことを示す。
と置くと、
一方,
よって
従って
より、(5)の各成分が等しいので、(5)の等式が成立する。
4. 具体例
2つの行列を
とする。とを図3 のように区分けすると、は次のように計算できる。
5. 参考文献
[1] 線型代数入門
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