ベイジアン研究所

プログラミング言語(アルゴリズム的な話が中心)やガジェットの紹介をしています。時々心理学の話も。

【線型代数学入門】逆行列の計算方法

1. 記事の目的
以下の記事で逆行列に関して述べた。

camelsan.hatenablog.com

しかし、逆行列の具体的な計算方法を述べずにいた。ここで、以下の記事で行列の階数を導入した。行列の階数を使って逆行列を求める方法に関する定理を証明することができる。

camelsan.hatenablog.com

2. 結論
最初に、どのように逆行列が計算できるか結論を先に述べる。(n,n)正則行列A逆行列A^{-1}を求めるには、(n,2n)型行列

\begin{pmatrix}A&E\end{pmatrix}\tag{1}

を左基本変形のみで

\begin{pmatrix}E&B\end{pmatrix}\tag{2}

の形にしたとき、BA逆行列である。即ち、B=A^{-1}である。左基本変形のみで、(1)式が(2)の形に必ず変形されることは、明らかではないが、次に証明する定理で保証される。

3. 定理
まず初めに次の定理を証明する。
定理[1]
n次正方行列Aが正則であるためには、その階数がnに等しいことが必要かつ十分な条件である。
証明A基本変形して、ある正則行列PQに対して、

PAQ=\begin{pmatrix}E_r&0\\0&0\end{pmatrix}\tag{3}

となったとする。Aが正則であると仮定すると、PAQも正則でなければならない。従って、(3)式より、r=nである。逆に、r=nと仮定する。

PAQ=E_n

より、A=P^{-1}Q^{-1}。よって、Aは正則である。

上記の定理を使って、次の定理を証明することができる。
定理[2]
行列Aが正則ならば、左(あるいは右)基本変形だけでA単位行列に変形することができる。逆に、左(あるいは右)基本変形だけでA単位行列に変形できれば、Aは正則である。
証明Aが正則ならば、定理[1]より、ある正則行列PQがあって、

PAQ=E\tag{4}

(PQは基本行列の積)(4)式の左からQ、右からQ^{-1}を掛けると、

QPA=E\tag{5}

QPも基本行列の積なので、(5)式は、左基本変形のみでA単位行列に変形できることを示している。また、逆にAが左基本行列のみで単位行列に変形できると仮定すると、基本行列の積であるQが存在して、

QA=E

となる。これは、Aの階数が、nであることを意味するので、定理[1]よりAは正則である。

4. 逆行列の計算方法
Aが正装行列のとき定理[2]から、左基本変形のみで、単位行列に変形できるので、ある正則行列Qがあって、

QA=E

両辺に右からA^{-1}を掛けると、

Q=A^{-1}

ここで、(n,2n)型行列

\begin{pmatrix}A&E\end{pmatrix}

を考える。このときQを左から掛けると、

\begin{split}Q\begin{pmatrix}A&E\end{pmatrix}&=\begin{pmatrix}QA&QE\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{区分けされた行列の演算})\\&=\begin{pmatrix}E&A^{-1}\end{pmatrix}\end{split}

即ち、本記事の冒頭で述べた事が言える。

5. 逆行列の計算例

A=\begin{pmatrix}1&2&3\\-2&-3&-4\\2&2&4\end{pmatrix}

逆行列を求める。

\begin{split}\begin{pmatrix}A&E\end{pmatrix}&=\begin{pmatrix}1&2&3&1&0&0\\-2&-3&-4&0&1&0\\2&2&4&0&0&1\end{pmatrix}\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&2&3&1&0&0\\0&1&2&2&1&0\\2&2&4&0&0&1\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{1行目の2倍を2行目に加える})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&2&3&1&0&0\\0&1&2&2&1&0\\0&-2&-2&-2&0&1\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{1行目のー2倍を3行目に加える})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&0&-1&-3&-2&0\\0&1&2&2&1&0\\0&-2&-2&-2&0&1\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{2行目のー2倍を1行目に加える})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&0&-1&-3&-2&0\\0&1&2&2&1&0\\0&0&2&2&2&1\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{2行目の2倍を3行目に加える})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&0&-1&-3&-2&0\\0&1&2&2&1&0\\0&0&1&1&1&\frac{1}{2}\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{3行目を1/2倍})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&0&0&-2&-1&\frac{1}{2}\\0&1&2&2&1&0\\0&0&1&1&1&\frac{1}{2}\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{3行目を1行目に加える})\\&\rightarrow\begin{pmatrix}1&0&0&-2&-1&\frac{1}{2}\\0&1&0&0&-1&-1\\0&0&1&1&1&\frac{1}{2}\end{pmatrix}\ \ \ \ (\textbf{3行目の−2倍を2行目に加える})\end{split}

よって、

A^{-1}=\begin{pmatrix}-2&-1&\frac{1}{2}\\0&-1&-1\\1&1&\frac{1}{2}\end{pmatrix}\

となる。

次の記事

camelsan.hatenablog.com

6. 参考文献
[1] 線型代数入門