【線型代数学入門】逆行列の計算方法
1. 記事の目的
以下の記事で逆行列に関して述べた。
しかし、逆行列の具体的な計算方法を述べずにいた。ここで、以下の記事で行列の階数を導入した。行列の階数を使って逆行列を求める方法に関する定理を証明することができる。
2. 結論
最初に、どのように逆行列が計算できるか結論を先に述べる。型正則行列の逆行列を求めるには、型行列
を左基本変形のみで
の形にしたとき、がの逆行列である。即ち、である。左基本変形のみで、(1)式が(2)の形に必ず変形されることは、明らかではないが、次に証明する定理で保証される。
3. 定理
まず初めに次の定理を証明する。
定理[1]
次正方行列が正則であるためには、その階数がに等しいことが必要かつ十分な条件である。
証明:を基本変形して、ある正則行列、に対して、
となったとする。が正則であると仮定すると、も正則でなければならない。従って、(3)式より、である。逆に、と仮定する。
より、。よって、は正則である。
上記の定理を使って、次の定理を証明することができる。
定理[2]
行列が正則ならば、左(あるいは右)基本変形だけでを単位行列に変形することができる。逆に、左(あるいは右)基本変形だけでを単位行列に変形できれば、は正則である。
証明:が正則ならば、定理[1]より、ある正則行列、があって、
(、は基本行列の積)(4)式の左から、右からを掛けると、
も基本行列の積なので、(5)式は、左基本変形のみでを単位行列に変形できることを示している。また、逆にが左基本行列のみで単位行列に変形できると仮定すると、基本行列の積であるが存在して、
となる。これは、の階数が、であることを意味するので、定理[1]よりは正則である。
4. 逆行列の計算方法
が正装行列のとき定理[2]から、左基本変形のみで、単位行列に変形できるので、ある正則行列があって、
両辺に右からを掛けると、
ここで、型行列
を考える。このときを左から掛けると、
即ち、本記事の冒頭で述べた事が言える。
5. 逆行列の計算例
の逆行列を求める。
よって、
となる。
次の記事
6. 参考文献
[1] 線型代数入門
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