【線型代数学入門】行列式の定義
1. 記事の目的
以下の記事で、置換について述べた。置換を用いて、行列式と呼ばれるものを定義する。行列式を用いて、行列の階数を求めたり、連立方程式の解を求めることができる。
2. 行列式の意味
行列式を一般的に定義する前に、2次正方行列の行列式の意味について考える。
2次の正方行列の行列式は、高校で習うように
に対し、の行列式は
である。(1)の値の、図形的な意味を説明する。行列式の意味を述べるための準備として、以下で、平面ベクトルの定義とその線形変換について述べる。
2.1. 平面ベクトル
平面ベクトルとは、2次元平面上の長さと方向を持った量のことである。図形的には、矢印で表現される。図1のように2点PとQをとったときにPからQへ向かう矢印として表される。
ベクトルは、"方向"と"長さ"による量であり、その"位置"には関係ない。つまり、図1の矢印を平行にずらしたものも、全く同じベクトルとなる。特に、Pを原点(2次元座標の)にとった時のPとQを結ぶベクトルを位置ベクトルという。
ベクトルを次の方法で、二つの数の組で表すことができる。PとQを結ぶベクトルをQとする。Pの座標を、Qの座標をとする。
とすると、は、PとQを結ぶ線の方向と大きさのみにより、位置にはよらない。実際、Pの座標を、Pの座標をだけ移動した座標をとすると、の座標は、となる。Qも同じだけ移動させる。移動先を、とすると、の座標は、となる。PQとは矢印の方向と大きさは同じで位置のみが異なる。この時、ベクトルにおける、(2)の数を求めると、
従って、PとQを結ぶベクトルを、各々の座標の差である、(2)の数の組で表現することができる。(2)の数の組をベクトルの成分と呼び、
と書く(PとQを結ぶベクトルをとしている)。
2.2. 平面ベクトルの線形変換
平面ベクトルを成分表示して(と書く)左から、二次正方行列を掛けると別のベクトルの成分表示に変換することに対応する。例えば、
として、
とすると、ベクトルは、
に移る。との位置ベクトルを同一平面上に書くと図2のようになる。
ベクトルを別のベクトルに移す規則である行列のことを線形変換という(言葉遣いが紛らわしいが、線形変換と呼ばれる写像を定義できるが、それは結局行列と1対1対応があるということが証明される)。
2.3. 行列式の意味
ここで最初の目的に戻って、2.1と2.2で用意した概念を用いて、二次正方行列の行列式の意味について述べる。
2次元座標を頂点とする正方形を考える(図3参照)。
原点とAを結ぶベクトルを、、原点とBを結ぶベクトルを、とすると、それぞれを成分表示すると、
である、とを線形変換
で移動させる。このとき
であり、図3の正方形は図4の平行四辺形に移動される。
図4の平行四辺形の面積を求める。図5のように求めることができる。
まとめると、二次正方行列の行列式は1辺の長さが1の正方形を線形変換で移動させてできた平行四辺形の面積のことである。
2. 行列式の定義
より一般的に、次正方行列の行列式を定義する。
次正方行列に対し、
を行列の行列式といい、
などと表す。但し、
は、全ての文字の置換に渡る和を表す。
行列の各列を列ベクトルで表したときに、
と表すこともある。
例:のとき、3文字の置換を列挙すると、
より、
各々の符号に関しては、恒等置換を互換で何回変換すれば対象の置換になるかを考えればよい。
3. 参考文献
[1] 線型代数入門
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[2] note "行列式 |A|=ad-bc の幾何学的意味"
視覚的に行列式の意味が述べられており大変わかりやすかった。ベクトルなどの必要な言葉を用意してこちらの内容をそのまま書いたに過ぎない。