【集合位相入門】集合
1. 記事の目的
現代数学は、主に集合及び集合と集合の間の関係を記述する写像を使用して、議論を行う。例えば、線型代数においては、平面ベクトルを抽象化したベクトルの集合(線型空間)を使用して議論を行う。ここではその基礎として、集合の定義と集合の演算について述べる。
2. 集合の定義
集合を厳密に定義することは、大変難しいことである。幾人もの天才たちが長い歴史を通じて成し遂げたことであり、その内容を解説することも理解することも困難であるということを頭に入れておいてほしい。その上で、ここでは集合というものを次のように定義する。
ある明確な基準のもと、その基準で属しているか属していないかを決定することができるものの集まり。
集合とは、簡単にいうと何かしら集まったものである。集まっているものの一つひとつをその集合の要素(元ともいう)といい、集合に要素が入っていることをその要素が属しているという。ここで、「ある明確な基準のもと、属しているか属していない」というのは次のような意味である。2以上、8以下の整数の集合は、2、3、4、5、6、7、8という要素からなる、というのは誰もが納得することであろう。2以上8以下という数学的に厳密な基準があるためである。一方で、背が高い人間の集まりというのは、人によって解釈が異なり、明確な基準とは言わない(人によっては190cm以上が背が高いということもあるし、160cm以上でも背が高いという人がいるかもしれない)。従って、背が高い人間の集まり、は数学的には集合とは言わない。
3. 集合の記法
集合は、一般的には大文字のアルファベットで、、、、・・・などと表すことが多い。を集合として、がの要素であることを
と表す。逆にがの要素ではないことを
と表す。集合の中身を表示する方法は、大きく分けて2種類ある。直接表示する方法と、条件を使用して書く方法である。まず直接表示する方法について説明する。要素を全て列挙して中括弧{}で囲めばよい。
例:2以下8以上の整数の集合は次のように表示できる。
この記法には限界がある。2以上の整数の集合を上の記法で表そうとすると
となり、要素の数が無限にあって、いつまで経っても書くことができない(慣習的に、
と書くこともある)。このような時は、条件による記法が便利である。例えば、2以上の整数は次のように書ける。
即ち、{}内の:(コロン)の前に変数を書き、後ろに変数の条件を書くことで条件を使用して集合を記載することがある。
4. 集合の例
自然数とは、0、1、2のような小学校で最初に習う数字のことである。厳密にはペアノの公理と呼ばれるもので定義されるが、ここでは立ち入らない。自然数の集合を記号で、
と表す。即ち
である。
整数の集合は、自然数に負の数を含めたものであり、記号で
と表す。即ち、
である。
有理数とは、整数同士の分数値のことであり、有理数の集合を記号で
と表す。即ち、
である。
無理数とは、整数同士の分数で表示できない数である(やなど)。無理数全体の数号の記号は一般的には使用されない(次に紹介する実数の中で、有理数ではない数と表現されることが多い)。
実数とは、有理数と実数を合わせた数の集合のことであり、
で表す。図形的には、直線上に空いている部分はなく、全て数で埋め尽くされている様子をイメージすれば良い。
複素数とは、2乗して-1となるような仮想的な数を考えて(と表す)実数+実数の形の数のことである。複素数の集合を
と表す。即ち
である。
5. 集合の相等
二つの集合が等しい、ということを定義する。まず部分集合を定義する。集合がの部分集合であるとは、がの一部分であるということである。即ち、のどの元をとっても、それがであることである。がの部分集合であることを
と表す。
例:
とすると、
である。
集合が同じ集合である、という定義は、
かつ
が成り立つことである。即ち、次のことを主張することで集合が同じであることを証明することができる。
かつ
例:
とすると、である。
証明:は、を満たすので、のいずれかである。いずれの場合でも、より、
である。一方、は、を満たすので、である。従って
である。(1)と(2)よりである。
6. 集合の演算
共通部分
二つの集合の共通部分を、にもにも属している元全体の集合と定義する。記号で、
と書く。図1のように二つの集合の重なっている部分をイメージすれば良い。
例:
とすると、
である。
和集合
二つの集合の和集合を、のどちらか一方に入っている元全体の集合と定義する。記号で、
と書く。図2のように」二つの集合全体にわたる部分をイメージすれば良い。
例:
とすると、
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7. 参考文献
[1] 集合・位相入門