【線形代数学入門】線型独立
1. 記事の目的
本記事では、線型独立の定義に関して述べる。線型独立は、ベクトル空間の基底や次元の定義を理解する上で重要なものである(ベクトル空間については以下の記事を参照)。
2. 線型独立とは
線型独立とは、2次元の幾何ベクトルの言葉で言うと、「2つのベクトルの長さがあり、互いに方向が異なる関係にある」ことである。つまり、図1のような状態にあるとき、2つのベクトルは線形独立な関係にあるということができる。
3. 線型独立と線形従属
2.のようなイメージに基づいて、線型独立を厳密に定義する。まず、ベクトルの線形結合を定義する。
定義
をまたは上のベクトル空間とする。
に対し、元
を、の線形結合という。
個のベクトルのどれか1つは、は他の元の線形結合で表示できる可能性がある。
例1:において、
とすると
となる。このとき、移項して
という関係が成り立つ。
上記の関係を一般化して、ベクトルの間の関係
を線形関係という。
どんなベクトルに対しても、最も明らかな線形関係として、上式を
としたものがある。これを、自明な線形関係という。
戦記独立性および線形従属性を定義する。
定義
ベクトル空間のベクトルの間に自明でない線形関係が存在するとき、は線形従属という。一方で、自明な線形関係しかない場合は、線型独立であるという。
上記の例1のは線形従属である。」
例2 : において、
とすると、は線型独立である。実際、
より、連立方程式を解くことにより、が得られる。
4. 線型独立に関する定理
線型独立性に関し、3つの定理を証明する(基底に関する議論で重要になる)。
定理4.1
をベクトル空間、とする。
ベクトルが線型独立であることと、のうちある1個がほかの個のベクトルの線形結合としてあらわされること、は同値である。
証明:が線形従属であること、を仮定する。このとき自明でない線形関係
が存在する。なるがあるから、
よって、のうちある1個がほかの個のベクトル線形結合としてあらわされる。
逆にのうちある1個がほかののベクトルの線形結合としてあらわされること、を仮定する。即ち、あるに対して、
である。よって、移項することによって得られるの間の線形関係
は自明でない線形関係である。
定理4.2
をベクトル空間とし、とする。
が線型独立で、がの線形結合としてあらわされないならば、個のベクトルも線型独立である。
証明:の間に線形関係
があるとする。と仮定すると、
となり、は、の線形結合としてあらわされ、仮定に反する。従って、である。このとき式(1)は、
となり、の線型独立性から、である。よって、は線型独立である。
定理4.3
をベクトル空間、とする。
ベクトルがの線形結合であり各がの線形結合であれば、はの線形結合である。
証明:はの線形結合なので、
また、は各々、の線形結合なので、
よって、
従って、は、の線形結合であらわされる。
次の記事
5. 参考文献
[1] 線型代数入門
価格:2,090円 |
[2] ベクトルの一次独立って何?「わかった!」を増やします~数bベクトル