【線形代数学入門】部分空間と次元
1. 記事の目的
以下の記事で、部分空間の定義について述べた。本記事では、部分空間の次元(ベクトル空間としての次元)で成り立つ定理を証明する。
2. 線形写像による部分空間の次元
定理2.1
を部分空間、をからへの線形写像、をの零元とする。このとき、
が成り立つ。 証明:の基底を拡大して、を得たとする。このときがの基底となることを示せば、
となり、定理が証明される。
の任意の元に対し、となるの元が存在する。
とすると、であるから、
よって、の任意の元はの線形結合として表すことができる。
の線形独立性を示す。
とする。このとき、上式の左辺を線形写像の線形性を用いて書き換えることで、
従って、
がの基底であることから、
移項して
の線形独立性から、
特に、
が成り立つので、は線形独立である。よって、はの基底である。
部分空間の包含と次元に関して次の定理が成り立つ。
定理2.2
がの部分空間であるとき
(1) ならば、
(2) 、ならば
証明:
(1) の基底に、個のベクトル()を付加することで、の基底とすることができる。よって、
(2) より、(1)の証明の第1行でとなるので、との基底として同一のものをとることができる。よって。(任意の元をとると、と同一の基底の線形結合として表すことができるので、である。よって。従って、と合わせて得られる。)
3. 部分空間の和空間の次元
一般に、部分空間の和空間の次元は、それぞれの部分空間の次元の和とは一致しない。共通部分を考慮することで、実際には次が成り立つ。
定理3.1
がの部分空間であるとき、
証明:とおくと、、より、いくつかのベクトルを付け加えることで、、とおく。このとき、を証明すればよい。
の基底をとして、これにいくつかのベクトルを付け加えることで、の基底、および、の基底を得たとする。このとき、がの基底になることを証明する。
の任意のベクトルは、の和として、と書くことができる。よって、はの線形結合として表される。
次に、の線形独立性を証明する。次の線形関係があったとする。
があるとする。式(1)の第3項を移項して、
を得る。式(2)の左辺はの元、右辺はの元であるから、左辺と右辺はともにの元である。よって、
の線形独立性により、
式(3)を式(2)に代入して、
の線形独立性により、
従って、式(1)は自明な線形関係であり、は線形独立である。
4. 参考文献
[1] 線型代数入門
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